「節約する」をやめて、「増やす」ことを意識したら、世界はもっと広がりました
軽やかに暮らす人を紹介していく連載。今回話を聞いたのは、日本に来て10年になる台湾出身のミホさん。日本と台湾を行き来するだけでなく、視野を広げるために年に1度は必ず、世界のどこかへ旅をしているのだそう。ミホさんのような軽やかな暮らし方を送る秘訣を聞いてみました。…
新たなホテル「goodroom hotel 京都」がオープン。グッドルームの代表・小倉さんと、空間デザイン&設計を担当した高垣さんに、ホテルのコンセプトやこだわりについて詳しく聞いてみました。
text:RYO ODA
京都の中心地エリアにある「阪急電車・京都河原町駅」から徒歩10分、「京阪電車・三条駅」から徒歩5分。京都観光も楽しめるこの場所に、新たに「goodroom hotel 京都」がオープンしました。

これまでグッドルームは、サウナ付きコリビングレジデンス「goodroom residence」という、あたらしい住む場所をつくってきました。
今回、京都でホテルを新たにつくるにあたり、どんなこだわりを詰め込んだのか、設計・空間デザインを担当した高垣さんと、グッドルームの代表取締役である小倉さんにインタビューしました。
―― 今回ホテルをつくるにあたり、どのような場所にしたいなと考えていましたか?
小倉さん: 暮らしと旅の境界線が溶け合うような場所にしたいな、と思っていました。
これまで「どこにもないふつう」というコンセプトで、暮らしや日常のための場所をつくってきました。一方で、仕事と暮らしの境界線が曖昧になってきているように、暮らしと旅の関係性も変わってきていると思うんです。

小倉さん:だから今回は、完全に非日常な空間をつくるよりも、日常の延長線上の場所として、暮らすように滞在する場所をつくりたかったんです。それでいて、これまでの日常生活とはちょっと違う、どこか特別な場所にもしたい。
豪華絢爛なラグジュアリーさでもなく、かといって機能性重視のビジネスホテルでもない、日本の暮らしをベースにしたホテルをつくろうと決めました。
―― 小倉さんのおっしゃる「日常の延長」というコンセプトを、高垣さんは空間デザインとしてどう受け止めたのでしょうか。
高垣さん: 旅行に来て、ラグジュアリーな客室で非日常感を感じてもらう体験も、もちろん素敵だと思うんです。でも今回はあくまで、そういった非日常体験よりも「日常のちょっと先にある特別感」に気づいてもらえるような場所にできたらいいなと思っていて。
なので、一見するとシンプルだと感じられるデザインにしつつ、あえて「違和感」をさりげなく残すよう設計しました。
―― 「日常のちょっと先にある特別感」。具体的にはどういう感覚なんでしょう?
高垣さん: 人によって違う部分かもしれませんが、私は「ふとしたときに感じる美しさ」だと思うんです。「今日の光、綺麗だな」とか、「なんだか空の色がいつもより深いな」とか、そういうささやかなこと。
普段の生活だと気づかないような美しさに、気づいてもらえる場所。それがどこか、グッドルームらしさにもつながるのかなと考えました。

―― なるほど! でも空間として設計するのは、すごく難しそうですね。
高垣さん: その微妙な感覚をどう設計していくか考えたとき、今回のプロジェクトが「オフィスビルからの改修」だったことがひとつの鍵になりました。

高垣さん: オフィスビルって、住宅のスケール感からは大きくかけ離れてるんですよね。窓は大きいですし、天井も高い。柱も、一般的な住宅よりも非常に太いです。
そこに「人が暮らすための場所」をつくるだけでも、どこか違和感があるような空間になってしまいます。でもネガティブに捉えるのではなく、むしろその「違和感」をベースに組み立てていきました。
ちょっとした違和感を残すことで、いつも見落としてしまうような変化にも気づきやすくなる。そのような思想で空間をデザインしました。

高垣さん: たとえば、どう考えても部屋の真ん中にきてしまうような大きな柱があるんです。でも逆手に取ってみると、リビングスペースとキッチン、水回りとをゆるやかに分けてくれる存在でもあります。


高垣さん: 空間の広がりを確保しつつも、各エリアの違いをそれとなく伝える役割を持たせています。部屋の中心的な存在として、きちんと活かせる方法を考えましたね。
またこのホテルでは、寝室の角をなるべく取っているんです。両側からスライド式の扉が出てきて、直角で当たるようになっています。寝室の入口が壁で塞がれず、少しオープンになっている構造です。

高垣さん: 扉が開いている間はリビングとつながっていて、リビングが「中央の広場」のような場所になる。でも扉を閉めれば、それぞれのプライベート空間に戻れます。
家族や友人同士で泊まっても、みんなで集まる時間と1人で落ち着く時間の両方を心地よく楽しめると思います。

高垣さん: さらに、ワンフロアを半分に割って客室をつくったことで、窓からの光の入り方が正反対な部屋が生まれました。一方は窓が大きくて明るい部屋なんですが、もう一方は入り口から窓が見えず、奥側にある寝室から光が入ってくるちょっと暗めの部屋なんです。

高垣さん: 私は、大きな窓がない暗めの部屋のほうが「京都らしいな」と思っています。京都の町家って、さんさんと光が降り注ぐというよりは、落ち着いた光の中で静けさや陰影を感じるような場所が多いと思ったんです。

高垣さん: 細い路地のお店があったり、昔ながらの町家がこじんまりと並んでいたり。盛大な太陽光に照らされるよりも、室内の優しい明かりで落ち着いて過ごすイメージが強いと思います。

高垣さん: その「薄暗さ」があるおかげで「この奥にもまだずっと場所が広がっているんじゃないか」と感じられる空間が出来上がるんです。ホテルの部屋でも、寝室の窓からほどよく光が入ってくることで、リビングや部屋全体に奥行きが生まれます。
閉鎖的で暗い部屋ではなく、むしろ広さを感じ、落ち着きつつ解放感も静かに味わえる部屋ができました。

――ロビーや共用部も、わかりやすく和風の装飾を散りばめるのではなく、どこかほどよく京都らしさを感じるなと思いました。
高垣さん: 実は改修する前から、障子や木のルーバーなど、和風の要素が取り入れられていたんです。それを見て、個人的には「もうこれ以上は和風にしなくていいな」と思いました。

高垣さん: そのため、元々あった障子はそのまま生かしつつ、和風のデザインをむしろ引き算しました。和風な雰囲気を押し付けるのではなく、京都のホテルに来たことをよりさりげなく感じられる空間にできたらなと考えました。

高垣さん: ホテルが建っている場所は、観光地にも近いエリアです。そのため京都らしさを過度にアピールするよりも、むしろ控えめにしたほうが「goodroom hotel 京都」らしい空気感を演出できると思いました。
―― ホテルのコンセプトや設計についてお伺いしてみて、これまでにない滞在ができそうだなと改めて思いました。
小倉さん: 今回は狭い部屋でも40平米、広いところだと100平米くらいの、広めのお部屋をつくりました。1人で来るだけでなく、友人グループやご家族で一緒に来て、みんなで過ごす場所として使ってもらいたいですね。
それに、観光地としての京都だけでなく、もっと違う側面の京都も感じられる場所にしたいという思いもあります。

小倉さん: 私自身もよく京都に行くのですが、観光地だけでなく、人の暮らしの息遣いが感じられる街並みも好きなんです。観光地とはまた違った空気感を味わえます。
観光地としての京都だけでなく、暮らしが根づいた京都。そのふたつが溶け合う場所として、滞在を楽しんでもらえたらなと思います。
織田諒
織田諒
編集アシスタント。写真も動画も撮るのが好き。愛機はFujifilm。革のものと古いものが好き。論文を漁り回るのが趣味。