goodroomが目指す「どこにもないふつう」とは?ライフスタイルレジデンスをつくる理由を聞きました
goodroomが手がける”あたらしい住まい”である「goodroom residence」。なぜこれまでにない物件をつくり続けるのか。その理由をグッドルーム株式会社代表取締役の小倉さんに尋ねてみました。…
新橋の交差点に、ひときわ目を引くカーブを描いて佇む「堀ビル」。多くの人々に愛されてきたその歴史的建造物は、現在goodroomが提供するシェアオフィス「goodoffice新橋」として親しまれています。このプロジェクトを進めたのは、建物の保存活用事業を手がけた竹中工務店と、その運営を担うgoodroom。堀ビルに対する思いを、改めて聞いてみました。
text:RYO ODA
1932年に建てられ、関東大震災後の新橋のランドマークとなった「堀ビル」。国の有形文化財にも登録されたこのビルを、竹中工務店が改修。2021年より、goodroomが運営するシェアオフィス「goodoffice新橋」として開業しました。
どのような経緯で、そしてどのような思いで堀ビル改修プロジェクトを進めたのか。竹中工務店とgoodroomが何を目指し、共同でプロジェクトを進めたのか。
このプロジェクトを担当された竹中工務店の鍵野さんと、グッドルーム株式会社代表取締役の小倉さんにインタビューしました。
<鍵野さん>
2007年に株式会社竹中工務店に入社。現在、 開発計画本部(経営企画室兼務)シニアチーフプランナー。2015年の社内新規事業コンペでの提案が最優秀賞に選ばれ、歴史的建造物を保存活用する事業「レガシー活用事業」を推進。詳細なプロフィールはこちら
<小倉さん>
グッドルーム株式会社代表取締役。gooddays ホールディングスの共同創業者であり、住まい × IT を軸に「どこにもない、ふつう」を提案する事業群を展開。
――はじめに、歴史ある堀ビルを「シェアオフィス」として活用しようと考えた理由を教えてください。
鍵野さん: 2019年にオーナーにお会いし、堀ビルへの想いを伺った際に、この建物の魅力を極力残した形で事業性を確保する方法を考えました。
例えばホテルやレストランにする場合は、水回りの大規模な改修が必要です。建物の大幅な改造が求められるため、堀ビルの魅力を大きく損なってしまう可能性があります。
それに加え、法的な制約や立地環境という側面もあったんです。このビルを不特定多数の人が利用する施設にするには、求められる法的基準のハードルが高かった。そのような条件や制約の中でベストな選択肢だったのが「会員制シェアオフィス」でした。
また堀ビルという歴史的建物を活かすにあたって、東京にもよくある高層オフィスビルと同じではもったいない。新しい人に出会えたり、雰囲気を変えて仕事に集中できたり、「交流」や「発信」が生まれる場所こそが、これからのオフィスに求められる価値だと考えています。堀ビルなら、ここだけにしかないシェアオフィスを作れると強く思いました。
――堀ビルのような歴史的建造物をそのまま残すことは、やはり難しいことなのでしょうか。
鍵野さん: 歴史的建造物のオーナーには、残したい気持ちはある一方で、経済的な理由があって残せない人が多いです。だからこそ、採算が取れる形で建造物を活用・保存できる可能性を示せれば、実際に残せるケースも増えてくると思います。
オーナーの立場からすれば、所有しているだけで固定資産税や修繕費などの維持コストはかかりますし、周りからは「高く買いますよ」という話が来る。経済面でいえば、売却する方が楽なケースもあります。
ただ、中には「できれば残したい」と強く願っているオーナー様もいらっしゃいます。堀ビルのオーナーも同じでした。17歳でこのビルに嫁いでこられ、70年以上、この建物の中で過ごされた、ご自身の人生にとってかけがえのないものなんです。
その想いも受け、何とかして未来に繋げたいと思いました。
――建物自体の価値だけでなく、オーナー様の思いも起点だったんですね。
鍵野さん:オーナーの残したいという気持ちに応えるために「売却した場合」「建て替えた場合」「保存活用した場合」の3つの収支シミュレーションを精密に行いました。そして「堀ビルを残しても経済的に維持できる」と感じていただける事業計画を練り上げました。
建物のリノベーションによって価値を未来に継承することと、経済的負担の軽減を両立することで、オーナーに「残す」という判断をしていただけたと思います。
――そうした思いをもとに、具体的にはどのように改修を進めていきましたか?
鍵野さん: まず何よりも、大都会の交差点の角地にある、ランドマーク性の高い「外観」をなるべく残すことが最優先事項でした。経年劣化したタイルが剥落しないよう特殊な方法で補修したり、空調などの配管が外観を損なわないよう設備計画も工夫しました。
内装においても、堀ビルが持つ特徴的なデザインを残しています。たとえば、階段の木の手すりは竣工当時のものです。一度ペンキで塗りつぶされていたのですが、それを丁寧に全て剥がして磨き直し、本来の木の風合いを蘇らせました。
各個室の扉やドアノブも、基本的にオリジナルのものを極力使っています。防音性などの機能性を考えれば、最新のものに替えるべきかもしれません。しかし便利さ以上に、この建物ならではの「意味」を残すことを重視しました。
――そのような価値観が、goodroomとの協業にも繋がったのでしょうか?
鍵野さん: そうですね。goodroomさんにお願いした決め手は、一言でいえば「建物の魅力を共感して頂けるパートナーに感じたから」でした。
歴史的建造物を活用するということは、建物が持つストーリーを残すことでもあります。goodroomさんは、そうした「我々が大切にしたい部分」への共感が根底にあった。この建物が持つ歴史や魅力といった根本的な価値観を、きちんと共有できたと感じられたのです。
――竹中工務店の鍵野さんからは、goodroomへの「建物に対する価値観の共感」が決め手だったというお話がありました。小倉さんはこのプロジェクトについて、どう考えていましたか?
小倉さん: お話をうかがった時、我々も同じような方向を向いているのではないかと感じられました。私たちとしても「もともとあるものを活用しながら、人が集い、コミュニティが生まれるような場づくりをしたい」という思いを持っていたタイミングでしたから。
――竹中工務店の価値観と、goodroomの思想とも重なるところがあったんですね。
小倉さん: 私たちのリノベーション事業には、目指すべきは「新品・新築同様にすること」ではない、という思想が根底にあります。古いものにも、古いからこその良さがあります。その良さをどうやって現代の空間で魅力的に見せていくか、を常に考えてきました。
特に堀ビルは、新橋のシンボルであり、歴史ある素晴らしい建物。ですから、その価値や歴史をしっかりと活かし、現代に残していくのが、きっと大きな価値になると思いました。
――goodroomは、シェアオフィスの運営という「ソフト面」を担っています。どのような思想でシェアオフィスを運営していますか?
小倉さん: コロナ禍を経て「住む」と「働く」の境界線が以前よりも曖昧になってきたと感じています。その中で、ただワークスペースを用意するだけでなく、カフェやサウナといった「家でも仕事場でもない居場所」を設けることが重要だと考えたのです。
「住む空間」と「働く空間」それぞれが、まるで溶け出して混じり合ったような場所。そのような場所が「住む」と「働く」を心地よく繋げてくれると思います。コロナ禍を経た今だからこそ、そういった場所を味わいやすくなったと考えていますね。
――ただ働く場所ではなく、居場所としての価値にこだわる理由はありますか?
小倉さん: 根本的な変化として、人々の価値観が「所有」から「体験」へと移ってきていると感じています。高級車や高価なアイテムをただ「持つ」ではなく、どこでどういう時間を過ごせるのかを重視する、そういった考え方がより強くなっている気がしますね。
それはきっと、家やオフィスも同じ。ただ働ける場所というだけでなく、その場所にいるからこそ感じられるものを大切にしたいんです。
堀ビルのように、歴史的なデザインや職人さんによる手触り感を五感で感じながら働ける場所は、ほかのシェアオフィスにはない価値を生み出していると思います。そしてそのような場所に人が集まり、交流することで、シェアオフィスの利用だけにとどまらない新しい体験につながるかもしれません。
今後もさまざまなプロジェクトが形になっていく予定です。ただ古いものを残すだけでなく、そこにしかない体験や歴史を味わえるような空間を、これからも作っていきたいですね。
7月11日、「goodcoffee 新橋 by goodroom」がオープンしました。
約90年の時を超えて受け継がれてきた「堀ビル」にて、goodroomのこだわりコーヒーをお楽しみいただけます。メインのドリップコーヒーは、フルボディのリッチさ、キリッとした酸味やカカオの余韻が特徴で、毎日飲んでも飽きの来ない味わいです。
詳しくは以下の記事でご紹介しております。
「goodcoffee 新橋」グランドオープン!登録有形文化財「堀ビル」で「ちょっといいコーヒー」を
「“その人らしい”働き方とビジネスの成長を応援するワークラウンジ」をコンセプトとする、goodoffice。
月額18,800円(税込)で東京・大阪・福岡14拠点の goodoffice ワークラウンジがいつでもどこでも使い放題になるプランをご用意しています。
その日の営業先に応じて拠点を使い分けたり、場所を変えることでリフレッシュして仕事ができたり。“その人らしい”働き方の実現をサポートします。