goodroom は、さらなる成長を実現するために、本社を新たに青山に移転しました。
オフィス機能だけでなく、カフェ「goodcoffee 青山」や、自社オリジナルリノベーション「TOMOS」、コリビング「goodroom residence」を体験できるショールームなど、これまでの本社にはなかった新たな場所もつくられました。
どのようなことを考え、どのように空間をデザインしていったのか、設計担当の高垣さんにインタビューしました。
WU design 高垣麻衣花(たかがき・まいか)さん
建築家/空間デザイナー。2014年から2024年まで伊東豊雄建築設計事務所に在籍し、国内外のプロジェクトに従事。2025年にWU designを設立。建築からインテリアまで、環境と呼応する空間づくりを手がける。
多様な人たちが集まる場所に必要な「シンボル」
――まず、今回のオフィスが入る建物についてお伺いしたいです。今回はどのような場所に新たなオフィスができたのでしょうか?
高垣: 「青山オーバルビル」という建物の、4〜5階をリノベーションしました。もともとフィットネス施設として使われていた場所で、25mのプールが残っていたり4階と5階が一体になっていたりする点も、この建物の中では珍しい構成です。
4階はコワーキングスペース「goodroom lounge」と、カフェ「goodcoffee 青山」が入っており、goodroom の社員だけでなく一般的なお客さんも入れます。また、自社サービス「goodroom residence」や「TOMOS」の部屋を再現したショールームもあります。
さらに、4階にあった約200坪のプールは、そのまま社員食堂やイベント向けの空間に作り変えました。こちらは増田信吾さんと大坪克亘さんが設計した空間です。
そして5階は、goodroom 社員のみなさんが働くスペースです。
――まずは、一般のお客さんも入る4階について、どのように設計したか詳しくお聞きしてみたいです。
高垣: 4階には、「goodcoffee」、「goodroom lounge」、会議室、ショールーム、社内交流ラウンジなど、かなり多くの機能が入っています。そのため、さまざまな人が訪れる空間であることを最も意識しました。
社員やワークラウンジの会員さんはもちろん、親子でカフェに来てくれるかもしれませんし、ショールームを若い方々が見て回るかもしれません。
「goodcoffee 青山」は、働く人だけでなく、さまざまなお客さんがコーヒーや軽食を楽しめるカフェ自由に出入りできます。
しかし、ビジネスマンや社員、お客さんなど、さまざまな属性・目的の人を一箇所にいきなり集めてしまうと、どこか落ち着かない場所になってしまう可能性があります。
たとえば、休日にコーヒーを飲んでくつろごうとしている人の周りに、忙しく働いている人が集まってしまうと、違和感を抱いてしまうかもしれません。
かと言って、せっかく同じフロアにいるのに、機能ごとに完全に切ってしまうのも、goodroom らしくないなと思いました。
いろいろな人が訪れつつ、それぞれ自由に過ごせる場所にしたい。その思いに、建築としてどう応えるかが、4階の大きなテーマでした。
――実際には、どのような工夫をしましたか?
高垣: まずは中央に「受付ギャラリー」という場所をつくりました。イメージしたのは、公園にある噴水のような存在です。
公園には、昼休みに来る会社員もいれば、遊びに来る子ども、ベンチで過ごす老夫婦など、さまざまな人たちが集まりやすいですよね。目的や属性が違う人同士でも、噴水のようなシンボルがあるおかげで、居心地よく共存できます。そのような空間を構想しました。
そこで、中央の床を周囲より400ミリ高くして、真ん中に大きな木を植えました。壁は四方を完全に閉じるのではなく、対角線上にスペースをあけています。
カフェやオフィスなど、それぞれの場所で過ごす人が正面から丸見えになるわけではなく、斜めの方向へ視線が抜けるよう設計しました。
別の場所で誰かが過ごしていることは分かるけれど、直接的に見えすぎるわけではありません。無理に混ざり合うのではなく、お互いの気配が垣間見えるぐらいの距離です。
中央の床も、場所をゆるやかに分ける役割を持たせつつ、腰掛けられる高さにしています。まったく違う目的で来た人たちが、同じ場所にいられる状態をつくりたかったんです。
――中央にある木、かなり大きいですね。
高垣: 受付ギャラリーは、4階へ来た人が最初に目にする場所です。新しい本社のシンボルとなるものが見えるようにしたいなと思い、思い切った大きさの木を選びました。
ただオブジェとして木を設置するのではなく、四方の壁に沿って光や風をコントロールし、木が育ちやすい環境を可能な限り整えました。
木の生育を促す装置でもある壁や床が、カフェやワークラウンジなど異なる場所をゆるやかに共存させつつも、フロア全体の環境も作っています。
木漏れ日が差し込んだり、そよ風が吹いたりするような、滞在する人にとって本能的に居心地の良さを感じられる場所になったらと思い設計しました。
――カフェやショールームなど、周囲の場所の設計についてはどんなことを意識しましたか?
高垣: それぞれの場所では、これまで作ってきた「goodroom らしさ」をきちんと受け継いでいます。「これまでにない新しいものを作る」という意識よりも、培ってきたブランドやサービスの世界観がきちんと伝わるようにしたいと考えましたね。
インテリアの雰囲気や植物の種類、塗装の仕様、照明の形状など、なるべくgoodroom の既存の沿ったものを選びました。そのうえで、全体の空間と連続したデザインとなるよう検討しました。
それぞれの場所を完全に閉じていないからこそ、「あっちには何があるのかな?」「ちょっと覗いてみようかな?」といった動きも生まれやすくなっています。別々の場所なのですが、ひとつの空間でもあるという繋がりを残しつつデザインしました。
「静」と「動」が共存する執務エリア
――goodroom 社員が利用する5階の執務エリアは、どのように設計しましたか。
高垣: 5階は中央の交流エリアと両側の執務エリアといったようにエリア分けしました。大きなワンルーム空間だったため、壁は立てず、床の種類の切り替えや照明など、最小限の設計で全体を構成しています。
リモートでも仕事ができるようになった中で、出社する意味とは何かを問い直した際、出てきた考えのひとつが「コミュニケーションの重要性」でした。そのため、コミュニケーションを大事にできる空間にしよう、というのがテーマのひとつです。
しかし、執務エリアのいろいろな場所で会話が起きると、集中して作業をしたい人にとっては少し気になってしまうかもしれません。
そこで、オフィス中央に交流のための専用エリアを設け、活発に意見を交わしたり、グループ会社や部署を越えて話しやすい場所を作ろうと決めました。
コミュニケーションを重視するエリア
一方、集中して仕事をする場所も広く確保しています。「静」と「動」の用途は明確に分けつつ、繋がりも感じられるよう設計していきました。
まずわかりやすいのが、照明や床です。中央のオープンスペースは少し温かみのある光にして、床も木のフローリングへ切り替えました。光の色と木の柔らかさによって、落ち着いた雰囲気でカジュアルにコミュニケーションを取れる雰囲気をつくっています。
照明の色や形式、床・壁の素材を変えることで、自然とモードが切り替わります
また、壁で全体を囲うのではなく、ある程度の高さの壁を設置しています。壁が無いと視線や声が気になってしまいますが、完全な別の場所にもしたくない。「繋がっているけど違う場所」を作るためにも、壁の高さにも目的を持たせています。
細かな調整の積み重ねで、集中する場所と会話のための場所とを分けながら、同じフロアで働いている感覚を残すようにしました。
そこで過ごす人々のことを考え、綿密に設計する
――高垣さんの設計からは、そこで過ごす人のことを考えながら、細かいところまで考えを巡らせていらっしゃるなと感じました。
高垣: 建築は、完成して終わりではありません。そこに来てくれる人々が、どう過ごせるかが大切です。
最初の第一印象でインパクトを残すことも、もちろん大切です。でも、何のための場所にしたいのか、そこで人々にどう感じてもらいたいのかを丁寧に考える必要があると思っています。
受付ギャラリーも、見た目だけを考えるなら、印象的なオブジェのようなものを置いて終わりでもいいかもしれません。しかし、訪れる人々やオフィス環境が混ざり合いつつ、一緒に育っていく空間が、このオフィスの中心には必要だと思ったんです。
このオフィスで過ごす人たちが、少しでも過ごしやすさや居心地の良さを感じてくれたら嬉しいなと思います。
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