時と場所で姿を変える本屋『BOOK TRUCK(表参道・東京)』
本も好きだけど、本屋はもっと好き。ずらりと並んだ本や雑誌の棚を眺めているだけでも刺激的だし、最近では、カフェを併設していたり、可愛い雑貨が売られていたり、面白そうなイベントを開催していたり、本屋で過ごす時間がどんどん楽しくなっている。そこで、2017年、あなたのお気に入りの本屋を見つけてみませんか。 (text : Miha Tamura / photo : Takuya Kanai)…
本も好きだけど、本屋はもっと好き。ずらりと並んだ本や雑誌の棚を眺めているだけでも刺激的だし、最近では、カフェを併設していたり、可愛い雑貨が売られていたり、面白そうなイベントを開催していたり、本屋で過ごす時間がどんどん楽しくなっている。そこで、2017年、あなたのお気に入りの本屋を見つけてみませんか。
(text : Ako Tsuchihara / photo : Kayoko Aoki)
本の表紙をイメージさせるブルーの扉、窓際も本でぎっしり埋め尽くされている。外から見ても、本をこの上なく愛している本屋さんなんだとわかる。扉を開けると、そこは小さな玄関で、スリッパがスタンバイ。そう、ここは土足厳禁、靴を脱いでお邪魔する本屋さんなのである。
部屋を見上げれば天井には雲の壁紙、正面には駄菓子がおいてあったり、ぬいぐるみが飾られていたり。なんだか子どもの頃に遊んだ児童図書館を思い出し、出迎えてくれた主の竹田信弥さんに「初めて来たのですが、なんだか懐かしい感じがして、ホッとしますね」と言うと、
「それは嬉しいですね。2015年暮れにオープンしてまだ1年ですが、100年後もそんな風に言われる本屋でありたいと思っているんですよ」と満面の笑みを返してくれた。
「100年後」という言葉が刺さった。聞けば、竹田さんのモットーは『100年残る本屋』だという。「だって本屋は激減しているでしょ」。
確かに。インターネットの普及による出版業界の衰退や、amazonの日本上陸(2000年)により、この15年間(2000〜2015年)で、書店の数は約2万店から半分の1万店に減った。年間平均約600店ずつ閉店していることになる。
このままだと、地球から本屋がなくなるかもしれない……。だからこそ100年後に残る1軒でありたいと、言うのである。
かくいう竹田さんも14年前からネット古本屋をやっていた一人だ。
「高2の時、友だちや先生の本、ネットの本などを買い取って、それを在庫として部屋に置き、本の紹介をしつつ、ネット販売するという古本屋を始めました。店名も今と同じです。趣味の域でしたけど、案外、売れるので楽しかった」
大学卒業後、ベンチャー企業に就職。その間もネット販売を続けていた。転機が訪れたのは2013年。知り合いが、白山のガレージを自由に使っていいので、本屋をやればと勧められたのだ。竹田さんに迷いはなかった。
「アルバイトを確保して、すぐにやると決めました」
思った以上にどんどん書店が減っていく。でもいい本は、いつの時代も必ずある。それをどう繋げていけばいいのだろうかと、思っていた矢先だった。
「10年、趣味で続けてきたネット販売。でもそれだけでは難しいことを実感していました。やはり、いい本をつなげるにはいい本屋が必要だと。そこで、まずは手探りでもいいからリアルな店舗を持つべきだと思ったのです」
2013年、白山店オープンの頃には、新しい試みをする書店が現れ始めていた。そんな中、竹田さんは試行錯誤していた。
「せっかく場所があるのですから、居心地が良く、人が集まる場所になればいいなと思いました」
そこで、本をテーマにしたホームパーティや読書会を開いた。すると、いろいろな人から本に対する意見や本屋に望むことを聞くことができた。そんな中、作家と読者が交流できる場にしたいという気持ちが強くなっていった。
「他店では作家をゲストにするイベントも増えてきており、それも考えたのですが、実際にイベントに参加した人に聞くと、言いたいことや正直な感想を言えないという意見もあった」
考えた挙句、閃いたのは、作家の本棚を覗く、というアイデア。
ここの書棚は、所々に木製のブックエンドが挟まっており、作家名が刻印されている。そこには、数十冊、作家さんが選んだ本が並ぶ。だからジャンル別でもないし、古本も新刊も、リトルプレスも混じり合う。これまでに見たことがない構成だ。タイトルだけ眺めていても飽きることなく、作家さんの頭の中をちょっぴり覗いた気分にもなってくるから面白い。
「もし、世界中に本屋が1軒になってもここは残りたい、と言いましたが、実際、そんなことはないでしょう(笑)。いい本屋は、必ず存在し続けます。それより僕は、読書家100人の100冊アーカイブを作って、いい本を脈々とつないでいく、そんな場所を世界中に増やしていきたいと思っているんです」
借りるのではなく、思い切って購入したという赤坂の店舗。竹田さんの決意と夢が詰まった本屋さんなのだ。
『日本文学全集 古事記』 河出書房新社
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