鈴木育郎『最果』
鳶職人をしながら、日常をカメラにおさめ、写真新世紀2013グランプリを受賞した若手写真家。
「彼は、撮った写真を現像して、そのままキンコーズでレーザー出力し、すぐ自分で写真集にまとめてしまう。そんなリニアな過程でつくられた本を、今までに数百冊出しています」
この写真集『最果』は、2014年夏の東京都写真美術館「最果」展展示作品の完全版。分厚い数百ページの写真が無造作に閉じ紐でまとめられており、限定2部しかこの世にない。
この写真を見て、どう思いますか? と小笠原さんに問いかけられ、つい、「綺麗・・ではないと思います」と答えた。ただ、ついじっくりと何度でも振り返ってしまいそうな、鈴木育郎という人の人生に引きずり込まれてしまうような魅力がある。
月丘舎, 2014
限定2部 | 19x29cm | カラー
https://sobooks.jp/books/57930
Richard Misrach『On The Beach』
8×10 (エイトバイテン)といわれる大型カメラで撮影するリチャード・ミズラックの作品は、写真集も超大型。「本屋泣かせのサイズ。これが入る本棚はなかなかないですね」と、本棚の上のほうから出してくださった。大きく精緻に撮られた一面の青は、一見すれば「美しい海の写真」と捉えてしまいそうだが、あとがきを読めば、9.11のときに国際貿易センタービルから落ちてゆく人々の姿に衝撃を受け、その光景にインスパイアされて撮られたものだということがわかる。よく見ると、ぽつり、ぽつりと青の中に浮かぶ小さな人は、どこか現実味がなく、独特の感情を引き起こす。
Aperture, 2007
初版 | 英語 | 43x60cm | 写真図版数38点 | 80pp. | カラー
https://sobooks.jp/books/41104
ART/LIFE: Communication for the creative mind. Volume 7, Number 8 September 1987
「繊細な作品も多いので、気をつけてくださいね」と見せてもらったのは、1981年から25年間刊行されたという「月刊誌」。中をのぞいてみて驚いたのは、1枚1枚のページがすべて「アート作品そのもの」になっているのだ。自らもアーティストであるJoe Cardellaが、アーティストの作品を集め、限定200部でハンドメイドで綴じ、販売したという。表紙の3Dメガネも、イラストではなく実際にコラージュされている。ユーモラスで”モノ”としての魅力もある1冊。
ART/LIFE, 1987
限定200部 | 28x22cm
https://sobooks.jp/books/49518
Sigmar Polke『Daphne 400 Xerographs in 24 Chapter』
ドイツのコンテンポラリーアーティスト、ジグマー・ポルケによる、オウィディウスの名作古典にインスパイアされ描いたドローイングや、銅版画など、総計400点がおさめられた画集。なのだが、じつは、途方もなく手がかかっている。
「これは、限定1,000部をすべてゼロックスコピーで複製してつくられたものなんです。だから、コピーしたときの手の痕跡が残っていたり、歪みがあったり、ひとつとして同じものはないんですね」
Snoeck, 2004
限定1000部 | 44x30cm | モノクロ
https://sobooks.jp/books/4269
デジタルで大量に、安価に作品が作れるようになった時代にも、「アナログ」は、ただ前の時代に回帰するだけではなく、その活用の仕方、楽しみ方はどんどん進化していくのかもしれない。SO BOOKSの店内に並べられた「モノ」としての圧倒的な力を前に、そんなことを思った。
SO BOOKS
東京都渋谷区上原1-47-5
03-6416-8299
OPEN : 13:00-19:00 (日・月休)
https://sobooks.jp/
>goodroomで代々木八幡駅の賃貸を見る
>goodroomで小田急線の賃貸を見る
>goodroomで渋谷区の賃貸を見る
december 2016 | アナログの楽しみ方。