それどこで買ったの? ひとり暮らしのテーブル・デスク実例まとめ
ワンルームや1Kの賃貸のお部屋で、生活の全ての基本となるテーブル・デスク。素敵なテーブル・デスクを持ってる方に、それ、どこで買ったの!? て聞いてみました。DIYの事例もたくさんありましたよ。…
部屋にさりげなく置いてある家具や道具。
他愛のないモノであり、毎日、当たり前のように使うモノ。
けれど、このささやかなモノたちに、心を向けることができたら。
たとえば、座りやすくて丈夫な椅子があったら、のんびり本が読めるし、
使いやすい道具があれば、毎日の料理や掃除を頑張れてしまう。
ふつうの毎日がちょっぴり楽しくなるかもしれません。
暮らしの何気ない風景にある家具や道具を、
丁寧に作る職人がいます。
使いやすいように、壊れないように、飽きがこないように。
そう願いながらモノを作る。
そんな手仕事の人を訪ねて、日々を楽しむきっかけを探したいと思います。
(text : Ako Tsuchihara / photo : Kanako Nakamura)
「手仕事の人」の第1回目は、木工の家具作家Workscreator 浜田隆志さん(38)。無垢の杉を削り、椅子やテーブル、チェストなど、オーダーに合わせて何でも作ってくれる。しかも無垢杉のスツールが5000円以下と、驚くほどリーズナブル。そんな浜田さんの手仕事を見に作業場へ向かった。
ずいぶん迷った。東京都ではあるが、西多摩郡日の出町の浜田さんの自宅兼工場に到着するまで、森や林、川など自然ばかりで、これといった目印がなく、ぐるぐると周辺をうろついていた。
ポンコツ車の不明瞭なナビを見ながら、「ええい」と山へ続く道に突っ込む。すると、見るからにこだわりありそうな家が現れた。塀も柵もなく、のびのびと青空に向かうように立つ2棟。これに違いない。
表札を確かめてやはり。インターフォンを鳴らすと、浜田さんがひょっこり現れた。
「すいません、まだ名刺、ないんです」と、なぜかいきなり恐縮している。
後ろから、小さなお子さんが顔を出し、照れながらニコニコ。
木々に囲まれ、ゆるやかな空気が流れ始めた。
「この家は、4年前に建てたんです。じつは3年前まで、住宅の建築会社の会社員でした。外側のいわゆる箱だけ大工さんに作ってもらって、内装は全部、自分でやりました。のんびりやっていたので、1年くらいかかりましたけど」
白を基調に、床や家具は無垢の木で統一されたご自宅。工場の方は、壁も天井もすべて木。無垢の木が好きなことがよくわかる。
「木が好きなのは、使えば使うほど味が出るところです。手で触れば触るほど馴染んで、色で言えば、あめ色になります。孫の代の頃には黒く光ってくるみたいな感じ。また、使っているうちに爪や物が当たったりして細かい傷がつきます。その傷が増えれば増えるほど、美しい模様に見えてくる。そんなところがたまらなく好きなんです」
工学院大学・建築学科卒。在学中は都市デザインに興味を持っていたが、大きな建造物のパーツにしか関われない仕事だとわかり、卒業後は、住宅建築の会社に就職した。
「建築会社に14年いました。ただ、会社によっては、設計、営業、施工管理の各部門だけにしか関われないこともあります。僕は、住宅ができるまでのすべてに関わりたかったので、何度か転職を繰り返し、最後の4年間は年に7棟しか作らない小さな注文住宅の会社に就職しました」
そこでは、発注主のお客様の要望を聞き、外装から内装、建具や家具も1つ1つ、話し合って図面を決めた。さらに材料を揃え、塗装、建具、家具の職人さんと打ち合わせとまさにすべてに関わる。時には大工のようなこともやった。
そんな経験のなかで「こだわればこだわるほど、全部、自分でやりたくなるんです。人に頼むとイメージ通りにいかないこともあるので……」という。
休みの日には、いわゆる日曜大工に没頭し、また、暇さえあれば、知り合いの家具職人のところに遊びにいくようになっていった。
3年前、とうとう会社を辞めて家具作家に転身をした。趣味が高じてといえば、それまでだが、本当は、一番やりたかったことだったのかもしれない。
「少し遠回りをした」とポツリ。
じつは、25歳のときに出会った家具職人のことがずっと忘れられなかったのだ。
「13年ほど前、勤めていた建築会社に、金髪の青年が飛び込みで営業に来たんです。派手ないでたちのインパクトもすごかったのですが、何よりも彼の家具への熱い話に惹かれました。そこで彼に仕事を発注することになったです」
その人は、今や業界でも超がつくほど有名な家具職人である。
「彼の仕事場に行くと、真剣な眼差しで、固い木を小刀一本でシャーシャーっと削ってあっという間に椅子を作っている。見た目とのギャップにますます惹かれました。また、何よりもすごいと思ったのは、全部自分でやる。その気迫、迫力‥‥。カッコいい。これ、いいな、ってその時、思ったんです」
いまでもその家具職人を尊敬している。
「レベルが違いすぎます。僕にとっては永遠の憧れの人です」という。
しかし、浜田さんの家具にも「らしさ」がある。
材料はほとんど杉である。
「杉は、柔らかく加工しやすいし、いまの僕にはうってつけの材料です。また、木を削るのが好きなんです。僕の作る家具は、図面がなく、部屋に置かれるイメージを頭で描いて、実際に木を削りながら創造していきます」
お客さんから入るオーダーが、言葉だけでイメージしづらい場合は、極力、お部屋の写真をメールなどで送ってもらうようにするという。
「同じ杉のチェアでも、部屋の雰囲気によっては、脚の太さを細く削った華奢な方がしっくりくる場合もあります。反対に、太くてもなめらかな曲線を出した脚にした方がぴったりな場合もあります。だから部屋を見せてもらえると削りやすいんです」
「暮らしの中に自然に溶け込み、使いやすく、長く使える家具」
浜田さんが目指すのは、そんな家具だ。
「オーダー家具というと、手が届かないというイメージがあると思うんです。でも、僕の作る家具は、一般的なそれより、ずっと安いと思います。それはどんな人にも、暮らしにあった家具を使ってほしいからなんです」
家具は、暮らしの一部。100人に100通りの暮らしがあるように、家具も暮らしに合った100通りがあるはず。そう浜田さんは考えているのだ。これは、住宅建築の仕事の中で培ったモノ作りの考え方。
「だから直接会ったり、メールや電話で細かく要望を聞きます。どんな小さな要望にも応えたい。お客さんから、こういうのが欲しかったんです、使いやすいからまた作ってください、なんて言われることが一番うれしい。そして何十年も使ってくれたらもっとうれしいですね」
Workscreator 浜田隆志さんへの家具のご注文やご相談
https://www.facebook.com/Workscreator-626380207478663/